「パンはでっかい方が美味しい!」
私にパン作りを教えてくれたシェフが、こう言っていたのを今でもよく覚えています。最初は「本当かな?」と半信半疑だったのですが、実際にパン教室でレッスンを重ねるうちに、この言葉の意味が心から理解できるようになりました。
今、12月のレッスンでは「パネトーネ」というイタリアの伝統的なパンを作っています。大きいものと小さいものを両方作るのですが、どちらもフワッフワで美味しいのに、大きい方が明らかに食べ応えも食感も違うんです。
この記事では、パンのサイズが美味しさにどう影響するのか、私の実体験を交えながらお伝えしていきますね。

私がこの記事を書ける理由
まず、なぜ私がこのテーマについて書けるのかをお話しさせてください。
私は、プロのシェフから直接パン作りを学び、現在はパン教室を開催しています。毎回のレッスンで生徒さんたちと一緒にパンを焼きながら、「パンのサイズによって味わいがこんなに変わるんだ!」という発見を共有しています。
特に今月のパネトーネレッスンでは、意図的に大小のサイズを作り比べているので、その違いをリアルタイムで体感しているんです。理論だけでなく、実際に何度も作って食べて確かめた経験があるからこそ、自信を持ってお伝えできる内容です。
パネトーネで実感!大きさで変わるパンの美味しさ
12月レッスンの大小パネトーネ比較
パネトーネは、イタリアのクリスマスに欠かせない発酵菓子パンです。レーズンやオレンジピールが入った、ふわふわで香り豊かなパンなんですよ。
レッスンでは、直径18cmの大きいサイズと、直径10cmの小さいサイズを作ります。どちらも同じ生地、同じ作り方なのに、食べた時の印象がまったく違うんです。
大きいパネトーネは、ナイフを入れた瞬間から違います。ふわっと弾力があって、口に入れると綿菓子のようにとろけるような食感。一口食べると、「ああ、パンを食べている」という満足感がしっかり感じられるんです。
一方、小さいパネトーネも美味しいのですが、どこか物足りなさがあります。あっという間に食べ終わってしまって、もう少し食べたかったなという気持ちになるんですね。

パンのサイズが食べ応えに与える影響
なぜこんなに違うのでしょうか?
答えはシンプルで、中身(クラム)の容量が違うからです。小さいパンは、どうしても中身の部分が少なくなります。すると、パンの本来の味わいや食感を十分に楽しめないんですね。
大きいパンなら、一口食べるごとにふわふわの生地をしっかり味わえます。レーズンやオレンジピールの風味も、たっぷりの生地と一緒に口の中で広がって、リッチな味わいになるんです。
これは、ケーキでも同じですよね。小さなプチケーキより、ホールケーキを切り分けたほうが、スポンジのしっとり感やクリームのバランスをしっかり味わえます。パンも同じなんです。

バゲットに見るパンの大きさと美味しさの関係
クラムとクラストのバランスが重要
パンの美味しさを語る上で欠かせないのが、クラム(中身)とクラスト(皮)のバランスです。
バゲットは、このバランスが特に大切なパンです。細く小さく成形されたものは、クラストの割合が多くなります。もちろん、カリカリの皮も美味しいのですが、それだけだとどこか固すぎる印象になってしまいます。
でも、適度に大きく太さのあるバゲットなら、中のもっちりしっとりした部分をしっかり味わえて、そこに皮のザクっとカリカリした食感がアクセントになります。この対比が、バゲットの醍醐味なんですよ。

パンの大きさによって食感が変わる理由
焼成時の水分量と蒸発のメカニズム
ここからは、少し科学的な話になります。といっても、難しくないので安心してくださいね。
パンを焼く時、生地の中の水分が蒸発して、あの独特のふわふわ食感が生まれます。でも、小さいパンは表面積が大きい割に中身が少ないので、水分が逃げやすいんです。
例えば、同じ量の生地を使う場合を考えてみましょう。大きく1つに成形すれば、表面積は小さくなります。でも、小さく4つに分けると、表面積は合計でずっと大きくなりますよね。
表面積が大きいほど、焼いている間に水分が蒸発しやすくなります。結果として、小さいパンは少しパサつきやすく、大きいパンは内部の水分がしっかり保たれて、しっとりふわふわになるんです。
クラムの気泡構造とサイズの関係
パンのふわふわ感は、気泡の構造で決まります。
パン生地を発酵させると、イースト菌が糖を分解して二酸化炭素を出します。この気体が生地の中に閉じ込められて、たくさんの小さな気泡ができます。この気泡が、パンをふわふわにしてくれるんですね。
大きいパンの場合、気泡がゆっくり安定して育つ時間と空間があるので、均一で美しい気泡構造ができます。小さいパンだと、焼成時の熱が早く伝わりすぎて、気泡が十分に育つ前に固まってしまうことがあるんです。
だから、大きいパンのほうが、ふわふわの食感が長持ちするんですよ。
美味しいパンを作るためのサイズ選びのコツ
パンの種類別おすすめサイズ
「じゃあ、すべてのパンを大きく作ればいいの?」と思うかもしれませんが、実はそうでもありません。パンの種類によって、美味しいサイズは変わってくるんです。
パネトーネ:できるだけ大きめがおすすめ。直径15cm以上あると、本来の美味しさが引き立ちます。
バゲット:標準サイズ(長さ60cm前後、太さ5-6cm)を守るのが基本。これより細いと、クラストばかりになってしまいます。もちろん家庭製パンの場合は難しいので、オーブンのサイズに合わせて作ってくださいね。
食パン:1斤型や1.5斤型など、大きめの型を使うと、しっとり感が長持ちします。
ロールパン:小さくても美味しい珍しいパン。これは、全体がクラストに近い食感を楽しむパンだからです。
家庭で作る際の注意点
「家のオーブンは小さいから、大きいパンは焼けない」という方もいるかもしれませんね。
確かに、オーブンのサイズは大切な要素です。でも、焼ける範囲で最大限のサイズを目指すだけでも、味わいは変わってきますよ。
大きいパンを焼く時の注意点は、主に3つです。
- 発酵時間の調整:大きいと発酵に時間がかかります。様子を見ながら、しっかり発酵させましょう。
- 焼成温度の管理:大きいパンは中まで火を通すのに時間がかかります。温度を少し下げて、じっくり焼くのがコツです。
- オーブンの容量:パンが膨らむ余裕を考えて、オーブンの7割程度のサイズまでにしましょう。
これらを守れば、家庭でも美味しい大きめパンが焼けますよ。

まとめ:パンの大きさと美味しさの深い関係
シェフから教わった「パンはでっかい方が美味しい」という言葉。パン教室を始めて以来、今、この言葉の意味を本当に理解できるようになりました。
パンのサイズは、ただの見た目の問題ではありません。
大きいパンは、クラムとクラストのバランスが良く、水分が保たれて、気泡構造も美しく育つ。だから、ふわふわでしっとりとした、満足感のある食感になるんです。
もちろん、小さいパンにも良さはあります。食べきりやすい、見た目が可愛い、いろんな種類を楽しめる、などなど。でも、「本格的な美味しさ」を求めるなら、ぜひ大きめサイズに挑戦してみてください。
パネトーネ、バゲット、食パン…どのパンも、大きく作ることで本来の魅力が引き出されます。
あなたも次にパンを作る時、いつもより少し大きめに挑戦してみませんか?きっと、新しい美味しさに出会えるはずですよ。
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