「冷蔵庫で寝かせたバゲットを焼いたら、なぜか酸っぱくてまずい…」
そんな経験、ありませんか?
実は私も、バゲット生地を3日間冷蔵庫で寝かせて大失敗したことがあります。焼き上がったバゲットは、酸っぱくて旨味もなく、家族にも食べさせられないようなものになってしまいました。
「長時間発酵すれば美味しくなる」と思っていたのに、なぜこんなことに?
この記事では、私の失敗体験をもとに、バゲットが酸っぱくなる本当の原因と、適切な発酵時間の見極め方を詳しくお伝えします。同じ失敗をしないために、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

私がこの記事を書ける理由
初めましての方もいらっしゃると思うので、簡単に自己紹介させてください。
私は、麹種という天然酵母を使ったパン教室を主宰しています。麹種は、日本の伝統的な発酵食品である麹を使った酵母で、独特の甘みと旨味を引き出せるのが特徴です。
教室では、生徒さんたちに「なぜそうなるのか?」という科学的な理由も含めてお伝えしながら、再現性のあるパン作りを指導しています。
そして何より、私自身が失敗を重ねてきたからこそ、「どこでつまずきやすいのか」「どうすれば防げるのか」をリアルにお伝えできるんです。
今回お話しする「3日発酵の失敗」も、私が実際に経験した痛い失敗談。でもこの失敗のおかげで、発酵のメカニズムをより深く理解できるようになりました。
【実体験】3日発酵させたバゲットが酸っぱくてまずかった話
失敗したときの状況
あれは、ちょっと忙しい週のことでした。
バゲット生地をこねて、冷蔵庫に入れたまま…うっかり3日間も放置してしまったんです。
「まあ、長時間発酵ってことで、きっと旨味が出てるはず!」
そう思って3日目に取り出して成形し、焼き上げました。
結果は…めっちゃ酸っぱくて、旨味もなくて、まずい。
クラスト(外側の皮)は焼けているのに、クラム(内側の生地)は変な巨大気泡がボコボコ開いていて、食感も粗くてパサパサ。香りもツンとした酸っぱい匂いがして、とても食べられるものではありませんでした。

☝️失敗したバゲット

☝️成功したバゲット
なぜこんなことになったのか?
当時の私は、「長時間発酵=美味しくなる」という単純な理解しかしていませんでした。
でも実は、使っている酵母の種類によって、適切な発酵時間は全然違うんです。
私が使っている麹種は、糖を栄養として増殖する麹菌が主役。麹の酵素が、生地の中で旨味や甘み、もっちり感を作り出してくれます。
ところが、この麹種には弱点がありました。
それは、糖を食べ尽くしてしまうと、美味しさではなく酸味が出てしまうということ。
特にバゲットのような糖分を加えないハード系のパンは、もともと生地中の糖が少ないため、3日も発酵させると完全に糖が枯渇してしまったんです。
バゲットが酸っぱくなる3つの原因【科学的に解説】
私の失敗を分析した結果、バゲットが酸っぱくなる原因は大きく3つあることが分かりました。
原因①:糖が枯渇して酵母が欠食状態に
小麦粉には、酵母のエサとなる「糖」が含まれています。この糖を食べて、酵母はアルコールと二酸化炭素を作り出し、パンを膨らませてくれるんですね。
ところが、3日間も冷蔵庫で発酵させると、その糖がほぼ食べ尽くされてしまいます。特に麹が含まれているので、なおさら糖が枯渇するスピードは速くなります。
すると何が起こるか?
- 酵母の活動が弱まる
- その代わりに、乳酸菌や酢酸菌が増えやすくなる
- 結果として、ヨーグルトっぽい酸味やツンとした酸味が出る
特に、バゲットのようなハード系のパンは糖の添加が少ないため、糖枯渇による酸味が強く出やすいんです。
食パンやブリオッシュのようなリッチな生地なら、砂糖や牛乳に含まれる糖があるのでもう少し長く持ちます。でもバゲットは小麦粉・水・塩・酵母だけのシンプルな配合なので、糖が少ない分、限界も早く来るというわけです。
原因②:グルテン分解が進みすぎる
長時間発酵すると、生地の中で「プロテアーゼ」という酵素が働き続けます。
このプロテアーゼは、グルテン(小麦粉のタンパク質)を分解する酵素。適度に働けば生地が扱いやすくなるんですが、働きすぎると問題が起きます。
- グルテンの結びつきが弱くなる
- 生地がべろんと緩んでしまう
- ガス(二酸化炭素)を保持できなくなる
- 一部だけに巨大な穴(気泡)があく
これが、過発酵と呼ばれる状態です。
過発酵になると、クラムがデコボコで不均一になり、食感も粗くなってしまいます。私が焼いた失敗バゲットも、まさにこの状態でした。
原因③:ガス調整が効かず気泡が暴走
糖が少なくて、グルテンも弱くなると、もう一つ困ったことが起きます。
それは、ガスのコントロールができなくなるということ。
通常、良い状態のバゲットは、細かくて均一な気泡がたくさん入っています。これは、強いグルテンがしっかりガスを保持できているから。
ところが過発酵状態では、
- ガスが留まりたいところに留まらない
- 弱い場所を押し広げてしまう
- 洞窟のような巨大な気泡ができる
- 生地の伸び方が不均一になる
つまり、「良い大きい気泡」ではなく「暴走気泡」ができてしまうんです。
過発酵のサインと見分け方
「じゃあ、どうやって過発酵を見分けたらいいの?」
そう思いますよね。実は、過発酵にはいくつか分かりやすいサインがあります。
見た目のサイン
まず、生地の見た目をチェックしてみましょう。
- 生地がだらんと緩んでいる
- ハリがなくなっている
- 指で押しても戻らない(指の跡が残る)
正常な発酵状態なら、生地には弾力があって、指で軽く押すとゆっくり戻ってきます。でも過発酵だと、押した跡がそのまま残ってしまうんです。
香りのサイン
次に、匂いを嗅いでみてください。
- ツンとした酸っぱい匂い
- ヨーグルトやお酢のような香り
- アルコール臭が強すぎる
発酵が進むとアルコールの香りはしますが、過発酵になると明らかに「変な酸っぱさ」が出てきます。この匂いがしたら、かなり危険信号です。
焼き上がりのサイン
焼いてみて初めて分かることもあります。
- 巨大で不均一な気泡
- クラムがデコボコ
- 食感が粗くてパサつく
- 酸味が強い味
こうなってしまったら、もう取り返しがつきません。だからこそ、焼く前にチェックすることが大切なんです。
長時間発酵は何時間まで?適切な発酵時間の目安
「じゃあ、結局何時間まで発酵させていいの?」
これ、一番知りたいポイントですよね。
バゲットの冷蔵発酵の限界時間
私の経験と、さまざまな実験の結果から言えるのは、
冷蔵庫(2~5℃)でのバゲット発酵は、48時間(2日間)あたりが限界ライン
ということです。
3日以上になると、もはや「熟成」ではなく「劣化」に転じてしまうと考えてください。
もちろん、これはあくまで目安。使う小麦粉の種類や酵母の量、冷蔵庫の温度によっても変わってきます。でも、2日以内に成形・焼成するというのが、失敗しない鉄則です。

バゲットは糖が少ないので長時間発酵に弱い
何度もお伝えしていますが、バゲットは糖添加が少ないハード系のパン。
だから、リッチな生地(食パン、ブリオッシュなど)に比べて、長時間発酵の許容範囲が狭いんです。
「とにかく長く寝かせれば美味しくなる」というのは、パンの種類によっては間違い。バゲットのようなシンプルな生地ほど、発酵時間の管理がシビアになるということを覚えておいてください。
まとめ:バゲットが酸っぱい原因と適切な発酵時間
長くなりましたが、ここまで読んでくださってありがとうございます!
最後にもう一度、大切なポイントをまとめますね。
バゲットが酸っぱくなる主な原因
- 糖枯渇:酵母のエサがなくなり、乳酸菌・酢酸菌が優勢に
- グルテン分解:プロテアーゼが働きすぎて生地が弱る
- ガス保持力低下:気泡が暴走して巨大な穴ができる
適切な発酵時間
冷蔵発酵は48時間以内が目安
3日以上の発酵は過発酵のリスク大です。
使う酵母の特性を理解することが重要
イースト、天然酵母、麹種…それぞれに適した発酵時間があります。自分が使っている酵母の特性を知って、それに合わせた計画を立てましょう。
失敗は次の成功への第一歩
私自身、この失敗があったからこそ、発酵のメカニズムを深く理解できました。
失敗から学び、次に活かす。これがパン作り上達の鍵だと思っています。
もしあなたも長時間発酵で失敗したことがあれば、それは決して無駄ではありません。「なぜそうなったのか?」を理解することで、必ず次は美味しいパンが焼けるようになります。
ぜひ、この記事を参考に、美味しいバゲット作りに挑戦してみてくださいね!

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