パン発酵のやり方|発酵器なしでも失敗しない家庭での発酵方法

「発酵器がないとパンは作れませんか?」

これは、私のパン教室でよく聞かれる質問です。教室では発酵専用の機械を使っているので、生徒さんが「うちには発酵器がないから無理かも…」と心配されるんですね。

でも、安心してください。パン作りに発酵器は絶対に必要なわけではありません。

実際、私自身も自宅でパンを焼くときは、オーブンレンジの発酵機能を使っています。むしろ、家庭でのパン作りなら、わざわざ発酵器を買う必要はないと断言できます。

この記事では、パン教室を運営する私が、実際に生徒さんにアドバイスしている「オーブンを使ったパン発酵のやり方」を詳しく解説します。特に、二次発酵と予熱をどう両立させるかという疑問にも、しっかりお答えしますね。

【私がこの記事を書ける理由】

私は埼玉県入間市でパン教室を主宰し、たくさんの生徒様にパン作りを指導してきました。教室では時間管理や安定した発酵のために発酵器を使用していますが、生徒さんのご自宅環境はそれぞれ異なります。そのため、「家にあるもので、どうやったら上手にパンが焼けるか」という相談を数え切れないほど受けてきました。この記事では、その経験をもとに、実際に効果のあった方法だけをお伝えします。


パン作りに発酵器は本当に必要?教室で使う理由

パン教室で発酵器を導入している3つの理由

私の教室で発酵器を使っているのには、ちゃんと理由があります。

まず一つ目は、一度にたくさんのパンを焼くからです。教室では生徒様全員分の生地を同時に発酵させる必要があります。一度に10個以上の生地を発酵させることもあるので、オーブン一台では足りないんですね。

二つ目は、レッスン時間内に確実に仕上げたいからです。3時間や4時間のレッスン時間が決まっているので、発酵時間を正確にコントロールする必要があります。発酵器なら温度調整が細かくできるので、時間通りに進められるんです。

三つ目は、安定した発酵環境を作りたいからです。室温に左右されず、いつも同じ条件で発酵させられるのは、教室運営では大きなメリットになります。

でも、これって全部「教室だから」という理由なんですよね。


家庭でのパン作りには発酵器は不要です

家庭で週に1回程度パンを焼くなら、発酵器は必要ありません。

発酵器って、意外と大きいんです。横幅45cm、高さ45cmくらいあります。キッチンに常に置いておくとなると、かなりのスペースを取ります。それに、お値段も2万円から5万円ほどするものが多いです。

オーブンレンジの発酵機能があれば、十分美味しいパンが焼けます。

実際、私も自宅では発酵器を使っていません。教室で教えている内容と同じパンを、自宅のオーブンだけで作っています。

発酵器が必要なのは、パン作りを仕事にしている方や、毎日のように大量にパンを焼く方くらいだと思ってください。

発酵器

オーブンレンジを使ったパン発酵のやり方【基本編】

まず確認!オーブンの発酵機能をチェック

パン発酵のやり方を説明する前に、まずはお手持ちのオーブンレンジに「発酵機能」がついているか確認してください。

オーブンのボタンや液晶画面に「発酵」というメニューがあれば大丈夫です。最近のオーブンレンジなら、ほとんどの機種についていますよ。

確認するポイントは以下の3つです。

1. 発酵機能の有無
取扱説明書を見るか、オーブンの操作パネルで「発酵」というメニューを探してください。

2. 温度設定の範囲
多くの機種では、30℃から45℃くらいまで、5℃刻みで設定できます。パンの一次発酵は30℃〜35℃、二次発酵は35℃〜40℃が目安なので、この範囲が設定できれば問題ありません。

3. スチーム機能の有無
スチーム発酵機能があると、さらにベストです。オーブンの下部に水を入れるタンクがついているタイプなら、スチーム機能が使えると思います。

パン生地は乾燥に弱いので、湿度を保つ工夫が大切です。スチーム機能があれば、自動で庫内を適度な湿度に保ってくれます。

HITACHIオーブン

パンの一次発酵のやり方

それでは、実際の発酵のやり方を説明しますね。

こねあがった生地を、ボウルまたはタッパーに入れます。表面が乾燥しないように、ラップや蓋をしてください。

オーブンレンジの発酵機能を使って、一次発酵は30℃〜35℃で40分〜60分が目安です。生地が約2倍の大きさになればOKです。

一次発酵は比較的失敗が少ないので、特に問題なく発酵してくれると思います。


パン生地の乾燥を防ぐ工夫

もしオーブンにスチーム機能がない場合は、次の方法で乾燥を防ぎましょう。

方法1:濡れ布巾をかぶせる
生地の入ったボウルに、固く絞った濡れ布巾をかぶせてからオーブンに入れます。

方法2:お湯を張ったコップを一緒に入れる
耐熱のコップや小さめの器にお湯を入れて、生地と一緒に庫内に入れておきます。お湯の蒸気で、庫内の湿度が保たれます。

私の教室でも、スチーム機能のないオーブンをお使いの生徒様には、この方法をおすすめしています。どちらも効果的ですよ。

オーブンの中の温度計

二次発酵と予熱を両立させるやり方【重要ポイント】

二次発酵で直面する「予熱問題」とは

さて、ここからが本題です。多くの方が悩むのが、この二次発酵と予熱の問題なんです。

パン作りの工程を思い出してください。二次発酵の次は、いよいよ焼成ですよね。パンを焼くときは、必ずオーブンを予熱する必要があります。

でも「あれ?オーブン、二次発酵で使ってるよね?どうやって予熱するの?」って思いませんか?

実はこれ、パン作り初心者さんが必ずぶつかる壁なんです。

「二次発酵が終わってから予熱したら、その間に生地が乾燥しちゃう」
「予熱だけで10分もかかるから、その間どうすればいいの?」

そんな声をよく聞きます。でも大丈夫。ちゃんと解決策がありますから、安心してくださいね。


二次発酵から焼成までの正しい手順

それでは、具体的な手順を説明します。この流れを覚えておけば、もう迷うことはありません。

手順1:成形した生地を天板に乗せる
成形が終わった生地を、オーブンの天板に並べます。間隔をあけて置いてくださいね。

手順2:乾燥対策をする
乾燥が心配な場合は、固く絞った濡れ布巾をふんわりとかぶせます。

手順3:オーブンで二次発酵を開始
天板をオーブンに入れ、35℃〜40℃に設定して二次発酵を始めます。レシピに書いてある時間を目安にしてください。

手順4:発酵終了の510分前に天板を取り出す
ここが最大のポイントです。二次発酵が終わる5〜10分前に、天板をオーブンから取り出してください。

手順5:オーブンの予熱を開始
空になったオーブンで、すぐに予熱を開始します。焼成温度(大体180℃〜210℃)に設定してください。

手順6:予熱中にトッピングや塗卵
予熱している間に、パン生地の仕上げ作業をします。塗卵(溶き卵を塗る)、ゴマやチーズをトッピングするなど、焼く前の最終仕上げです。

手順7:予熱完了後、焼成開始
オーブンの予熱が完了したら、濡れ布巾を取り外して(塗卵していれば必要ありません)、天板をオーブンに入れて焼きます。

この手順なら、予熱の時間を有効活用できて、スムーズに焼成に移れます。


予熱中も発酵を進める裏ワザ

「でも、10分も外に出しておいたら、発酵が止まっちゃうんじゃないの?」

そう心配される方もいますよね。実は、生地は温まった天板の余熱で、どんどん発酵が進んでいます。

酵母は生き物です。生地の中で常に活動しているので、オーブンから出しても発酵は止まりません。特に、温まった天板の上にあれば、その熱で発酵はしっかり進んでくれます。

それでも、もし発酵不足を感じて、予熱中にもっと発酵を促したい場合は、次の方法を試してみてください。

裏ワザ1:お湯を張ったボウルの上に天板を置く
大きめのボウルに熱めのお湯を張って、その上に天板を置きます。お湯の蒸気と熱で、生地の発酵が進みます。

裏ワザ2:予熱中のオーブンの上を活用
オーブンが予熱している間は、本体の上部が温かくなります。そこに天板を置いておくのも効果的です。

裏ワザ3:塗卵の乾燥防止効果を利用
塗卵(溶き卵)をした生地は、卵が乾燥防止の役割をしてくれます。だから、無理に濡れ布巾をかぶせておく必要はありません。むしろ、卵の膜で生地が保護されているんです。

私の経験では、ほとんどの場合、天板の余熱だけで十分発酵が進みます。心配しすぎなくて大丈夫ですよ。

狭山茶塩パン

季節別|パン発酵のやり方とコツ

夏場のパン発酵のやり方(室温25℃以上)

夏場は、発酵器どころかオーブンの発酵機能すら使わなくても大丈夫です。

室温が25℃以上あれば、発酵はどんどん進んでくれます。特にエアコンをつけていない部屋なら、あっという間に発酵が完了します。

夏のパン作りで注意したいのは、むしろ過発酵です。発酵が進みすぎて、生地がだれてしまうことがあるんですね。

夏場のコツは、こまめに生地の状態をチェックすること。レシピの時間より早く発酵が終わることも多いので、「2倍になったかな?」と思ったら、フィンガーテストで確認してみてください。

フィンガーテストとは?
指に粉をつけて、生地に穴をあけます。穴がそのまま残れば発酵OK、穴がすぐに戻ってきたら発酵不足、生地全体が沈んでしまったら過発酵です。

ホームベーカリーの生地のフィンガーチェック
Screenshot
ホームベーカリーの生地のフィンガーチェック

冬場・寒い時期のパン発酵のやり方

反対に、冬場はオーブンの発酵機能が大活躍します。

室温が低いと、発酵にとても時間がかかります。暖房をつけていない部屋だと、いつまでたっても生地が膨らまない…なんてこともあります。

冬のパン作りでは、迷わずオーブンの発酵機能を使ってください。温度設定は、一次発酵なら30℃〜35℃、二次発酵なら35℃〜40℃です。

ただし、冬場は庫内温度が設定温度に達するまで少し時間がかかります。なので、発酵時間もレシピより10分前後長めに見ておくといいですよ。

大切なのは、時間ではなく「生地の状態」を見て判断すること。生地が2倍に膨らんでいるか、フィンガーテストで確認するのを忘れずに。


まとめ|発酵器なしでも美味しいパンは作れます

さて、ここまで読んでいただいて、いかがでしたか?

パン作りに発酵器は絶対に必要というわけではありません。オーブンレンジの発酵機能があれば、十分美味しいパンが焼けます。

もう一度、大切なポイントをまとめますね。

家庭でのパン作りには発酵器は不要。オーブンの発酵機能で十分対応できます。

二次発酵と予熱の両立は、終了510分前に取り出すことで解決できます。

夏は室温発酵、冬はオーブン発酵と、季節に応じてやり方を変えましょう。

発酵時間はあくまで目安。生地の状態を見て判断することが大切です。

酵母は生き物。室温でも発酵は進むので、予熱中も心配しなくて大丈夫です。


最後に、パン教室講師からのメッセージ

「発酵器がないから、パンは作れない」

そう思って諦めないでください。

私がパン作りを始めたときも、発酵器なんて持っていませんでした。オーブンレンジ一台で、試行錯誤しながらパンを焼いていました。

パン作りの本質は、酵母という小さな生き物と対話することです。彼らは、発酵器の中でも、オーブンの中でも、ときには室温でも、一生懸命に生地を膨らませてくれます。

大切なのは、道具ではなく、生地の様子をしっかり見ておくこと。「今日はどんな感じかな?」と生地を見つめる時間こそが、パン作りの醍醐味だと私は思っています。

この記事が、あなたのパン作りの一歩を後押しできたら、これ以上嬉しいことはありません。

さあ、今週末は、お手持ちのオーブンでパンを焼いてみませんか?きっと、焼きたてのパンの香りが、あなたのキッチンを幸せで満たしてくれますよ。

オーブンからパンを取り出すところ

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